【2019年度版】監査報酬推移

2020年12月に日本公認会計士協会から2019年度の監査実施状況調査が公表されていますので、遅ればせながら前回記事の2019年度版をアップさせて頂きました。

2019年度 法定監査報酬

前回記事同様、2010年度からの監査報酬推移を折れ線グラフで示しています。


近年では2012年度、2013年度あたりで一度底を打ったあとは年々監査市場とも言うべき監査報酬総額は増大している傾向が継続しており、2019年度も2018年度から232億円(対前年度増加率:8.5%)増加、法定監査市場規模は総額2,952億円という結果になっていました。監査報酬の時間単価は総平均12,037円で前年度から比べると減少は減少なのですが、ごくわずかなもので、むしろ近年の傾向として横ばいと見るほうが良さそうです。

時間単価がほぼ一定で監査報酬総額が増えていますので、つまり監査時間が増大しているということですが、時間が増えた要因は何か?知りたいところです。そこで、監査時間を1法人あたり時間と法人数に分解してみますと、下記の通りです。

1法人あたり監査時間は2.5%増加しています。一方、法人数は5.7%も増加していました。どちらかと言うと法人数の増加が要因のようですが、1法人あたり監査時間の推移は今後も注視したいところです。監査対象となる法人数の増加が監査時間増加の要因とわかったところで1法人あたり監査報酬で推移グラフを作成してみました。

金商法・会社法の監査報酬推移

監査報酬総額が増加している要因は、主に法人数の増加だとわかりました。ここからは監査対象区分ごとにも確認しておきたいと思います。

上記のグラフの通り金商法・会社法の区分も全体傾向と同じく増加しています。と言うより、金商法・会社法の監査報酬が全体の9割近くを占める市場ですので(よほどのことがなければ)金商法・会社法の傾向がそのまま全体の傾向となります。ただし、2019年度特筆すべきは、金商法・会社法の監査報酬がはじめて9割を下回ったということです。計算したところ、全体に占める比率は89%になっていました。

ちなみに法人あたり監査報酬の推移を追記すると上のグラフの通りです。基本的には法人数が増えているため監査報酬総額が増えているのですが、直近では法人あたり監査報酬でも微増傾向です。法人あたり監査報酬もじりじりと増額しているのがわかります。

その他区分の監査報酬推移

最後にその他区分の監査報酬推移ですが、こちらは非常にわかりやすいです。新たな法定監査導入により毎年数十億円単位で増加させています。

補足①2017年度の増加要因
2017年度は2016年度の166億円から22億円増加して188億円になっています。 これは、社会福祉法人監査の法定監査が始まったことによるところが大きく、19億円の影響でした。

補足②2018年度の増加要因
2018年度は2017年度の188億円から25億円増加して213億円になっています。これは、医療法人監査の法定監査が始まったことによるところが大きく、21億円の影響でした。

補足③2019年度の増加要因
2019年度は2018年度の213億円から94億円増加して307億円になっています。これは、農協法の改正による農業協同組合の会計監査人監査への移行が始まったことによるところが大きく、73億円の影響でした。

まとめ

  • 2019年監査報酬総額は2,952億円
  • 2019年監査報酬総額は2018年から232億円増加
  • 主な内訳は金商法92億、会社法45億、農協73億
  • 監査報酬の時間単価は12,000円程度で横ばい
  • 監査報酬増額率8.5%だが、法人数も5.7%増加
  • 法人あたり監査報酬もじりじり微上昇を継続

それではまた別記事にてお会いしましょう!

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